院長の市川です。
いきなりですが、
「過敏性腸症候群(以下IBS)の人は乳酸菌を摂ってはいけません!」
こう言われたらどう感じますか?
患者さんへお伝えすると非常に驚かれます。
乳酸菌=お腹にいい
という考え方は、現在の日本において疑いようのない真実として捉えられています。
しかし、万人が美味しいと感じる食べ物がないように、どんな人にもプラスになる食品は存在しません。特に下痢型やガス型の患者さんからも乳酸菌を摂取した後、症状が悪化したという話を聞きます。
なぜ乳酸菌を摂取してはいけないのか、その理由をお伝えします。
一般的に「お腹の調子を整えるには善玉菌を増やしましょう」とよく言われます。その善玉菌の代表格は乳酸菌です。増えた乳酸菌がエサを発酵させることで、短鎖脂肪酸という酸を生成します。これが増えれば腸内は弱酸性となり、腸の動きを活発にする効果があります。
論文でラットの乳酸菌を増やし腸内を酸性化させることで腸の働きが良くなる結果が出ていることなどがその根拠とされています。
これが乳酸菌はお腹にいいと言われる一つの理由です。
2014年にIBS患者に最新の測定カプセル装置を使って腸内のpH(酸性かアルカリ性か)と腸の動きが正確に測定されました。
引用:Caecal pH is a biomarker of excessive colonic fermentation
するとIBS患者の腸内は健常者よりも弱酸性(pHの低下)であり、その結果盲腸の運動が低下している事が分かりました。
(一般的に痛みの表現として言われる「盲腸」は「虫垂」のことです)
乳酸菌で腸を弱酸性にするはずが、IBS患者の腸は既にその状態だったのです。
違う論文では下行結腸やS状結腸がある大腸の左側は弱酸性になることで過度に動きすぎてしまうことが分かっています。
引用:The relationship between the effects of short-chain fatty acids on intestinal motility in vitro and GPR43 receptor activation
大腸の左側が過度に動くというのは「強い便意が起こって下痢しますよ」という事です。このような状態で乳酸菌を摂取することがIBSの下痢を改善するとは思えません。
乳酸菌はおならにも関係してきます。
健常者の腸のpHは7~8(弱アルカリ性)、IBSのpHは6~7(弱酸性)であったとの論文があります。人の腸内でおなら(ガス)を作り出す菌の働きが最も活発になるのが弱酸性とされています。
(引用:過敏性腸症候群(IBS)の低フォドマップ食)
つまり、IBS患者の腸はガスが発生しやすくなっているのです。
また、先程の実験で「IBSの人は盲腸の動きが悪い」とありました。盲腸がある大腸右側の動きが悪くなれば食べたものが動かず発酵時間も長くなりガスがたくさん溜まります。
「おならが増え、溜まって苦しい」というのはこの様な身体の反応により起こります。
以前まで私は「ガスで悩む=便秘」というイメージでしたが改めて当院のカルテを調べてみるとガス症状と下痢症状を同時に訴える患者さんが過半数に達しています。
また当院が採用している整動鍼の考え方でもガスは消化不良と考え、下痢治療と同じツボを使用します。
こうした臨床上の人数からもこれらの実験結果と整合性がとれています。
ここまでの話を図にまとめます。
長年、お腹の不調に苦しんでいる人が症状悪化にもかかわらず「乳酸菌はお腹にいいはず」と思いこみ続けて摂取しているIBS患者さんの気づきになればと思います。
乳酸菌を扱う企業も出来るだけ商品が売れるように説明します。どれだけ良いと言われても体に合わなければ中止する勇気を持ちましょう!
自分の体の反応は、自分がいちばんよく知っているはずです。
コメント
同じカテゴリーの記事を見る
カテゴリー
過去の記事